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キャリア教育のヒント第18回――根本 英明

「未来ノート」は学び深める体験学習


 キャリア教育ワークブック「未来ノート」を利用した学習は、知識伝達型でなく、自ら参加・体験し、グループの相互作用の中で気づき、学びを深める体験学習である。各章のセッションのワークを実施することで、相手の話を聴いたり、自分の意見を述べたりといったコミュニケーション力や互いに協働して課題を解決していく力が培われる。これは学生が社会に出てから必要とされる能力そのものだろう。

 「未来ノート」を活用した授業では、講師は指導者でなく学生の学習活動を促進するファシリテーター役を担う。ファシリテーションとは中立的な立場でグループのプロセスを管理し、メンバー一人ひとりが主体的に自分の問題として捉え、納得して問題を解決し、成果を出していこうとするチームを活性化するやり方のこと。その進行支援役がファシリテーターである。

 グループワークは、グループのコンテントとプロセスに目を向けることが肝要だ。コンテントとは、チームで解決する課題やグループでの話題といった内容的な側面のことであり、プロセスとはグループの人間関係の中で起こっている気持ちや考えのことである。

 例えば、ある課題をグループで話し合った時、しゃべりが上手かったり、声の大きい人が場を支配してワークが進められていったとする。その時、発言しなかった人がしぶしぶ従い、自分が認められたという思いを持てずにいたとしたら、真のチームワークは成り立たない。側面だけでなく、意思決定のプロセスをしっかりと見ないと真の解決は図られない。

 ファシリテーターは、グループメンバー全員がワークに参加するよう配慮する必要がある。この場合、メンバーに向かって何らかの助言や問いかけをすることで、各メンバーがコンテントとプロセスのズレに気づく、もしくは何が起こっているかに気づいてもらうことが大切だ。

 体験学習は、次のステップを踏むことで学びを深める。「体験」(体験する)→「指摘」(そこで起こった事柄を集める)→「分析」(集められた事柄の意味や背後にある流れを突き止める)→「仮説化」(分析し、考察したことを基に自分なりの仮設をつくる)→「試行」(プランを立て実行する)(参照『人間関係トレーニング』、ナカニシヤ出版)。

 ワークを通じて問題解決力を身につけることができるため「学び方を学ぶ」場とも呼ばれる。ぜひ授業での実践をお勧めしたい。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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