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 キャリア・サポートニュース

 
 

キャリア教育のヒント第1回――根本 英明

専門学校のキャリア教育の意味


 先日、一般財団法人職業教育・キャリア教育財団(TCE財団)主催の「キャリア・サポーター養成講座」を受講した。講座の目的は、教職員のキャリア・サポート・マインドを培うこと。

 専門学校の教職員でない私は受講に先立ち、ふと考えた。「専門学校でキャリア教育をする意味って何だろう」。学びたいことが曖昧なまま入学する学生が多い大学(とくに社会科学系)に比べ、専門学校生は将来就きたい仕事が明確であるに違いない。だからこそ彼らは専門学校に入ったのだろうから。

 しかしそんな漠然としたイメージとともに、今回、共に学んだ人たちと話し合う中で、現在の専門学校生の抱える課題が浮かび上がってきた。

 「すべての学生が必ずしも明確な意思を持って入学してきているわけではない」「授業についていけず、卒業できない学生も少なくない」「やりたいことと入学後のギャップに悩んでいる」「友達ができず孤立している」「進路変更による中退者も少なからずいる」などなど。

 同時に学生を取り巻く環境も2000年以降、様変わりしている。非正規社員やフリーターの増加、3年3割と言われる新卒離職率などが社会問題となり、専門学校がもはや専門スキル習得や資格取得支援だけでは済まされなくなってきた現状がある。

 いまや専門学校も専門知識やスキルを学ぶことと併せ、学生自身が自らの仕事人生について考えたり、気づいたりして、自律的に行動できるよう支援していくことが求められている。そこにこの講座の意義があるのだ。

 そのためにはたんに就職の成功を目的とするだけにとどまらず、将来への不安や日々の悩みの相談も含め、学生が充実した生き方ができるよう支援していくことがキャリア・サポーターの重要な役割なのだと認識した。

 学生に関わっていく上で肝要なことは、学生を一人の人間として尊重し、その人の置かれた立場や状況に寄り添って理解していく姿勢や態度で接するということである。

 そこで注意しておきたいことがある。我々は往々にして、無意識のうちに先入観で人を評価し、判断しがちである。それを避けるためにはキャリア支援者自身が自らの仕事に対する意識や価値観を把握しておく必要がある。そうでないと、自身の無意識のバイアスで適切なサポートができないからだ。

 この連載では、そのためのガイドやヒントを一緒に考えていきたい。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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